BNR34のよくある故障と修理費用の目安【維持費節約術あり】

RB26DETTエンジン搭載の第2世代最終モデルにして、「スカイライン」という冠が付く最後のGT-R であるBNR34は、「人に翼を」という販売時のキャッチフレーズが見事に具現化された、国内スポーツカーの歴史に名を刻む名機です。

威圧感あるエクステリアや、ギャレット社製のセラミック・タービン採用による、最大トルク&低回転域トルクの向上で増した快適性が評価され、R32・R33に勝るとも劣らない人気をキープ、中古車市場では新車価格を上回る値段で取引されています。

そうはいっても、2002年12月の販売終了から16年が経過、あちこちにガタが来てしまうのは致し方ないところですが、BNR34特有の故障個所を知り適切に対処すれば、維持費を節約することも可能です。

車内塗料の劣化・ベタツキ


出典:skyline.matrix

これは先代でもよく発生するトラブルであり、年数が経過している分R33の方は「対処済」であることが多いため、あえてBNR34特有のトラブルとして解説しますが、2000年10月のマイナーチェンジで改善されています。

ベタツキが発生する箇所は、

  • エアコン噴き出し口
  • エアコン・オーディオパネル・灰皿
  • シフトレバー周辺カバー
  • パワーウィンドウスイッチパネル

などのプラスチック製パーツであり、施された塗料が熱で溶け軟化してしまうのが原因。

この内装プラスチックパーツへの塗装は、アルファロメオやフェラーリなどに採用されているものであり、ラグジュアリー感が増すため日産が真似したのでしょうが、イタリアより高温・多湿になる日本の気候に耐え切れず、年数が経過すると溶けてしまうようです。

対策としては、後期R34の各内装パーツへ交換するのが最も手っ取り早いですが、いかんせんコストがかさんでしまうため、自分でパーツを取り外し溶けた塗料を完全に拭き取り、再塗装するという手もあります。

作業工程は、ホームセンターで販売されているラッカー薄め剤を、ベタついた樹脂面へハケなどで塗布しながら徐々に溶かし、拭き取っていくイメージで進めていきます。
タオル地のもので拭き取るとケバケバが残って後処理が面倒なので、使い古しの白いTシャツ(カラーTシャツは色が内装パーツに付着する可能性があるためNG)など綿100%の生地がおすすめ。

きれいに除去できたら本来のパーツ表面が現れますが、マッドで存在感があるため未塗装のまま取り付けても案外カッコいいですし、純正と異なるカラーを塗装して個性を出すのもイイでしょう。

いずれにしろ、手間と時間はかかりますが後期パーツの転用では4~5万円は確実にかかるところを、DIYなら数千円で済ませることが可能なので、チャレンジするだけの価値は大いにあります。

ただ、前出した1~4までは素人でも簡単に取り外せますが、5はドア部の内張を全て外さないとならないため少々難易度が高く、強引に外すと爪が折れてしまう可能性大なので、ここだけプロに任せるかDIYするときは細心の注意を払いましょう。

MFD液晶パネルがボロボロ

BNR34には、スロットル開度やインジェクター噴射率・ブースト圧の変化まで、様々な車両情報が5,8インチの液晶画面で確認できる優れもの、「MFD(マルチファンクションディスプレイ)」が搭載されています。

このMFDに惹かれBNR34の購入を決めたオーナーも多く、販売当初は他車にはない画期的なシステムですが、何を表示しているかわからないほど液晶パネルが損傷することもあり、前期・後期ともに過去何度も持ち込まれた、BNR34特有のトラブル事例と言えます。

原因は液晶パネルの経年劣化で、最初は画面端の方が少々滲む程度で表示は見えるものの、年数の経過とともに画面中央へ侵食し、概ね10年程度でMFDは表示内容を全く確認できない、「無用の長物」と化します。

MFDで情報が確認できなくても、走行には一切支障をきたさないため放置して問題ありませんが、BNR34の売りともいえる装備なので、何とか直して活用したいのがオーナー心理。

しかし、純正に交換する場合は部品代と工賃を併せると、15万円以上飛んでいきますから、5万円あたりから販売されている、「社外液晶パネル」への交換がおすすめ。

適合する新品社外液晶モニターを通販で購入し、持ち込み依頼すれば半分以下のコストでMFDを修理することも可能で、手先が器用ならDIYもそれほど難しくありません。

なお、ネット上では1万円程度の超破格値で、中古液晶モニターが多数出品されていますが、新品液晶モニターの方が段違いに長持ちするため、いつ故障するかわからない中古品には、手を出さない方が無難です。

ハイマウントストップランプ周辺のサビ

これもBNR34でよく聞く劣化事例の代表的なもので、トランクについているハイマウントストップランプの周りがサビやすく、広がってしまった場合には最悪トランクごと交換しなくてはならない事態に陥ります。

販売からかなり年数が経過しているため、「仕方ないのでは?」と思われるオーナーも多いようですが、この箇所のサビは納車から2年しか経過していない新しい車体でも頻発した、BNR34が有する先天的欠陥が原因です。
(※リア同様フロントストラットでもサビによる腐食が起こる)

新車購入後5年間はクレーム対象になっていたため、防錆処理が施された対策品への無償交換が可能でしたが、中古流通のみである現在では自腹を切るしか、対処法が存在しません。

対策品へ交換した場合は、かなりサビの発生が少なくなるものの、純正の対策品は現在出回っていない上、社外のカーボントランクは値段がかなり張るため、ドレスアップついでならともかく、ハイマウントのサビが気になるというだけで交換するにはハードルが高い。

一方、ハイマウント自体を取り外して板金・スムージング加工(※)すれば、水が溜まることはないので絶対にサビは再発生しませんし、こちらの方がコスト的に安上りで済みます。

※2006年1月以降に製造された普通車は、スムージングすると車検に通らないため注意。

もちろん、DIYでサビを除去・再塗装するのが最も安上りな対処法ながら、短い時は2・3年周期でサビが再発生するため、サビ止めの塗布やシーリングなどを施したうえで、雨天時の走行や洗車後には溜まった水分を、毎回丁寧に拭き取ってあげましょう。

また、カー用品店で購入できるボディーカバーを駐車時に装着すれば、ハイマウントの錆を防げるだけではなく、紫外線によるカラーリングの色あせや、霜・雪・雹などによるダメージを軽減できるうえ、いたずらや盗難防止にもつながるためおすすめ。

数千円程度のリーズナブルなものから、車体を傷つけないソフト裏地構造で防炎加工を施された、2~3万円ほどする専用カバーまで価格帯は様々ですが、どれを選んでも費用対効果抜群なので、ぜひ購入と利用を検討してみてください。

イグニッションコイルがすぐに壊れる

当サイトの読者なら、イグニッションコイル(以下IGコイルと表記)の故障が多い・早いのは、第2世代に共通する持病とお考えでしょうが、実はBNR34ならではの原因があるため、有効かつ簡単な対策を伝授。

バッテリーの12Vの電圧を2,5万~3,5万V程度の高電圧に変換する、「変圧器」がIGコイルであり、1つでも故障するとエンジンが噴かなくなったり、「ボボボ…!」とまるでスバルのボクサーエンジンのような音を発したりします。
スカGTの第2世代が搭載しているRB26DETTエンジンは、シリンダーに1つずつIGコイルを配したダイレクト式が採用されているため、

  • 点火スパークの安定性向上
  • プラグコードからのリーク・失火防止

などといったメリットの半面、高熱によってIGコイルが劣化・断絶しやすいというデメリットもあるのです。

そして、ハイパワーで他のエンジンより高熱に達する、RB26DETT共通の泣き所には違いないのですが、IGコイルがむき出し状態のR32・R33と異なり、BNR34には樹脂製の分厚いエンジンカバーが取り付けられているため、この中に熱が溜まりやすい。

「NE06」と書かれたシルバーのカバーがそれで、見た目以外ほぼ存在価値はゼロですから、これを取り外してあげることによって、IGコイルの寿命を幾分長くすることが可能なのです。

なお、プラグカバー撤去も熱害に対して効果があるものの、プラグホール付近へのゴミの落下など、プラグ交換時にエンジンへ深刻なダメージを与えかねないため、やめておいた方が無難でしょう。

また、高負荷での使用時に純正品より故障しやすいと指摘されることもある、スプリットファイア製のIGコイルですが、反対に街乗りなど通常利用では純正より長持ちする傾向にあるため、ドライブシーンとマッチする方をチョイスしましょう。

ヘッドライト・レンズの黄ばみとくすみ

BNR34のヘッドライト・レンズは、プラスチック製なので黄ばみやくすみが発生しやすく、R32及びR33前期はハロゲン式だったため、ユニットごと新品へ交換することも選択肢に入れられますが、R33後期とR34はすべてディスチャージャー式。

いずれも、新品ヘッドライト一式が片方で20万円近くするため、市販されているレンズクリーナーなどでコツコツと磨き、なんとか凌いでいるケースも多いはずです。

そんな方へ朗報、近年「WISE SQUARE」というメーカーから、R34&R33後期用のヘッドライトリペアキットが、左右セットで3,5万円というリーズナブルな価格帯でリリースされており、こちらを使えばレンズだけを新品に交換することが可能になっているのです。

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R34のライトは、フロントバンパーを外さないと脱着不能ですし、「殻割り」と呼ばれるレンズとハウジングをつなぐ粘着ゴムの剥離作業には、ヒートガンが必要なうえ過度に熱すると、ユニットが変形したり作動しなくなる可能性もあるため、DIYはあきらめるべき。

とはいえ、プロからすればそれほど難易度が高い作業ではなく、交換工賃相場はバンパー脱着込みで大体3,5万円程度ですから、トータル7万円程出費すれば左右のレンズが新車時代の輝きを取り戻します。

ヘッドライトの黄ばみ・くすみが無くなれば、持ち前のカッコよさがより際立つだけではなく、夜間走行時の光量も向上するというおまけつきなので、悩んでいる方はぜひお試しください。

低速域で回転数の挙動がおかしい

発進時のアクセル操作で、回転変動が多少ギクシャクすることがあるBNR34ですが、知識や経験が豊富なベテランドライバーしか、症状が出ていても気づかないことも多いトラブルと言えます。

また、ユーザーによっては暴れ馬のようなこの独特な症状を、「クセ」と考えているケースもあり、低速域を抜けても安定しない場合はエアフロの故障などを疑うべきですが、低速域だけしか症状が出ない場合は、半クラ操作でごまかして乗り続けるのも手です。

また、対策ECUへの無償交換が2010年ごろまで実施されていたため、はっきり症状が出た中古車は既に交換されていることも多いですから、どうしても気になるという方は交換の有無を問い合わせたり、予算を増やして改善済の後期モデルを購入すると良いでしょう。

まとめ

今回解説したBNR34特有の故障・トラブル事例は、修理費用などの維持費節約はもちろんのこと、故障発生のリスクが少ない中古BNR34を見極めるのにも役立つため、知っておいて損はありません。

過走行気味であっても、指摘した箇所がすべて修理・交換済の場合は、低走行で一見すると程度が良く高額な中古出物より、低コストで維持することも可能になるため、BNR34を中古購入する際は今回の記事を参考に、「掘り出し物」を探してみてはいかがでしょうか。