邪道?GT-Rを投資目的で購入するのはアリかナシか徹底考察!

最初にお断りしておくと、素人が中古車を投資目的で購入し利益を出すことは、年式や車種に関わらず「限りなく不可能に近い芸当」なので、やめておいた方が無難です。

しかし、NSX・フェアレディZ・ランエボ・RX-7・S2000など、一部の1990年代・2000年代を彩った名車に限り、売買タイミングとコツを抑えれば投資が成立、つまり利益が発生する可能性もあります。

なかでも最も利幅が大きく、「儲かる!」と言われている存在が第二世代GT-Rであり、ネットには100万円以上利益が出たとか、今が買い時だとかいった情報も多く出回っています。

そこで今回は、GT-Rを投資目的で購入するのはアリかナシか、投資が成立するポイントである「25年ルール」の解説をベースに、収益性や現実味などについてプロの立場から徹底考察いたします。

投資目的の購入が成立する理由~米国・25年ルールとは~

日本以上にパワーのある車種が人気を博し、中古車市場規模も巨大な米国ですが、同国で新車販売されたクルマを除き、製造から25年経過していない中古車については、厳しい排ガス規制をクリアしないと公道を走行することができません。

また、世界的に少数派と言える右ハンドル車に関しては、輸入すら許可されていないのですが、製造から25年以上経過した中古車は規制対象外、かつ右ハンドルの輸入も解禁となる「25年ルール」が適用されます。

国産スポーツはどれも、取引相場の割に高スペックかつ長寿命であるため、通称・「クラシックカー登録制度」と呼ばれる25年ルール適用車種の米国におけるニーズは強く、最高峰に位置する第二世代GT-Rを求め、海外のバイヤーが日本に殺到。

その結果、海外流出が激化した第二世代GT-Rは、2013年頃を境に中古車相場が暴騰を始め、現在まで新車価格に迫る、あるいは大きく上回る高い取引価格を維持しています。

世代別!第二世代GT-Rにおける投資目的購入の収益性と現実味

通常、中古車は年式・モデルが新しいほど取引相場も上昇傾向を示しますが、「25年ルール」が絡む第二世代GT-Rの場合、R32(BNR32)・R33(BCNR32)・R34(BNR34)それぞれ収益性や、投資成功につながるポイントが異なってきます。

時すでに遅し?R32は投資目的で購入・売却するより長く乗り続けたほうが◎

1994年12月に販売終了したR32は、2019年11月の執筆時点でほぼすべての車体が25年ルールの対象となっており、総生産台数が4万4,000台に達しているものの、年式が古いことと海外流出により、国内流通台数がすこぶる少ない。

好条件で修復歴ナシの車体や、Vスペック&VスペックⅡ及びNISMO・N1に関しては、「高くてもいいから乗りたい!」と考えても、なかなか中古出物を見つけることができない状況です。

今後も国内外、特に米国でのR32人気が衰えるとは考えにくいうえ、熱烈なファンによる争奪戦が繰り広げられることも容易に予想されるため、急激に取引価格が値崩れすることはないでしょう。

ただし、買値と売値との「差額」に関しては大きく縮小しているため、今からR32を投資目的で購入するのは現実的ではなく、運良く購入できた場合は伝説のRを所有するステータスを得ることや、長く乗り続け楽しむことにコストを割いた方が無難です。

また、既にR32 オーナーである場合は「売却タイミング」を見極める必要もあり、あくまで「予想」とお断りしておきますが、国内流通量の減少と現在の円高傾向(※)を考慮すると、売却に関しては「待ち」の姿勢でいたほうが良いかもしれません。

※為替相場が円高に振れると、海外での輸出利益が低下するため高く売れない。

その一方、R32人気は他を圧倒するため、車検を通過し走行できる状態であるなら「カッコだけ」でも乗りたいと考えている購入層が多いことから、過走行・低年式で状態が悪い出物を買い叩き、自ら手をかけOH・レストアできる場合は採算が取れる可能性も。

行きつけのカーショップに依頼することも可能ですが、いかんせん年式が古いR32の場合は中古やリビルト品の入手が難しく、新品購入とASSY交換でしか対応できないケースも多いため、コスト的に合わないことがほとんどです。

不遇な国内人気とは大違い!海外ニーズが高まっているR33は1~2年が売り時

2020年に25年ルールが適用され始めるR33 は、様々な理由(ほとんどが誹謗中傷!)で国内では不人気なものの、人気がない理由の1つである大きな車体が体格の良い欧米ユーザーからのウケが良いため、近年海外バイヤーによる激しい争奪戦が展開されました。

【2015年時点でのR33中古販売相場】

年式 走行距離 修復歴の有無 中古販売相場
1995年 6万km以下 有り 115~125万円
1996年 8万km以下 無し 137~147万円
1996年 6万km以下 無し 155~165万円
1997年 4万km以下 無し 240~265万円

【2018年時点でのR33中古販売相場】

年式 走行距離 修復歴の有無 中古販売相場
1995年 10万km以下 有り 190~215万円
1996年 9万km以下 無し 340~370万円
1996年 15万km以下 無し 210~230万円
1997年 10万km以下 有り 280~300万円

※標準車及びVスペックを含めた平均中古販売相場

その結果、R33はわずか3年余りで大幅に価格が高騰し、現在では走行距離が不明だったり修復歴があったとしても、「300万円以下」では購入できない状況になっています。

そして、米国に持ち込めるのであれば話は別ですが、車体の見極めから販売ルートなどが必要なので、素人が今から投資目的にR33を購入しても、利益を出すことは非常に難しいと考えられます。

一方、誹謗中傷に惑わされず優れたポテンシャルを見抜き、販売当時のキャッチコピーである「マイナス21秒のロマン」に魅せられ、R33を新車・中古車購入した現オーナーは大ラッキー。

当然、末永く愛し続けて欲しいところですが、もし手放すことを視野に入れているのなら、東京オリンピックが開幕する2020年夏あたりが、絶好の売却タイミングかも知れないと当サイトでは予測しています。

最高傑作と称されるR34なら投資目的での購入もアリ?!

1999年~2002年に販売され、総生産台数が約1万2,000台と第2世代GT-Rの中で最も少ないR34は、「25年ルール」に関係なく中古販売相場が高騰しており、現在700万円を切る価格では購入できず、400万円台で買える後継モデルの「GT-R」を凌駕しています。

条件がある程度良ければ「1,000万円オーバー」もザラ、限定モデルである「VスペⅡ・ニュル」に至っては「1,500万円以上」の超高値で販売されており、今後標準車も含めさらに高騰していくと予想されます。


出典:Goo-net

事実、ここ数か月だけで150~200万円高騰していますが、R34の場合は既に海外バイヤーらによる「先物買い」が進行しているため、数年間は「横ばいor微増」に留まるとみています。(と言っても数百万円レベルでの話ですが…)

そして、価格大爆発の「Xデー」はやはり2024年1月にやってくる「25年ルール」解禁周辺で、「良い状態が保たれている」ことを前提にすればグレードにかかわらず、「現相場の倍」を超える取引価格になる可能性もあります。

あくまで「予想」とお断りしますが、前期・標準モデルなら「1,400万円」、Vスペ及びVスペⅡは「1,600~1,800万円」、販売即日に完売した1,000台限定のVスペ・ニュルに関しては、「3,000万円超」というバカげた価格になるかもしれません。

総合すると、R34の価格はしばらく横ばい・微増で推移したのち、「最高傑作」と称される雄姿を直接目にした海外ファンたちの購買意欲向上によって、東京オリンピック閉幕辺りから上昇傾向を示し始め、2025年の米国輸入解禁で「頂点」に達するのでないでしょうか。

また、R34の場合は価格上昇率が極端に大きいと予想されるため、海外への輸出パイプがなくても国内流通で十分元を取ることができるほか、比較的中古パーツやリビルト品を入手しやすい。

そのため、素人が投資目的で今から第二世代GT-Rを購入するのであれば、「R34一択」と言って良いと考えられますが、確実に利益を得るためには「2つの条件」を満たす必要もあります。

1つ目は、現オーナーもしくはこれから購入する場合、価格高騰が顕著となる数年後まで「車体を寝かせる」ことであり、目安として「3年」はたとえ価格が上がっても、売らずにじっと我慢すべきでしょう。

2つ目は、「良い状態を保つ」ことでありこちらの方が大変、「え?車庫にでも入れて大事に保管していればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、クルマ特にGT-Rのような高スペックモデルにとって、全く走行しないのは「良い状態」と言えないのです。

要するに、3年間公道を走行できるよう車検を受けながら自動車税などを支払い、念入りにメンテンナンスしつつ「維持・管理」する必要がある訳で、これにはなかなかの「コスト」がかかってきます。

例えば、車検2年付きの1999年式R34・Vスペを、800万円でローン購入した場合3年間良い状態を維持するため必要な「最低コスト」は、

  • 自動車税・・・58,650円×3年分=175,950円
  • 車検代・・・15万円
  • メンテナンス&消耗品代・・・4万円×3年分=12万円
  • 燃料代(年間2,000kmの慣らし運転)・・・5万円×3年分=15万円
  • 自動車保険(任意)・・・2万円×3年分=6万円

の合計である「約65万円」となり、駐車場を借りるケースやトラブル・故障などが発生する可能性もあるため、100万円以上の「売却益」が出て初めて投資成功と言えます。

「それならイケるじゃん!」と思った方は甘すぎる、筆者の予言通りR34の中古販売相場が倍以上になっても売却益は当然それより少なく、販売価格の「7割程度」をゲット出来れば御の字です。

つまり、首尾よく購入したR34が倍の1,600万円までの高騰しても、

1,600万円-(1,600万円×0.7)=480万円

となり、維持費を差っ引くと「380万円」が純利益になります。(ローンを組んだ場合は利息分も引かなきゃデス)

儲かりますよ多分…、でも万が一事故や故障で廃車になったら目も当てられませんから、まさしく「ハイリスク・ハイリターン」の大博打、筆者にチャレンジする勇気はありませんが、現役R34オーナーはうらやましい限りです。

※将来の売却相場予想はあくまで当サイトの推測であり、その価格を保証するものではありません。

35GT-Rの将来的リセールバリュー予測と投資目的購入の可能性

年次改良が施される現行・GT-Rに関しては、約12年先である25年ルール適用の影響がまだ出ておらず、モデル通じて玉数は多くありませんが第二世代よりスペック的に数段上、かつ状態の良い車体が500万円あれば購入できます。

ただし、米国同様GT-R人気が絶大な「カナダ」には、輸入解禁が10年も短い「15年ルール」が存在するため、2023年を境に小幅ながら取引価格が高騰する可能性もあるでしょう。

10年スパンの話をすると、投資目的での購入は非現実的ですが、中古GT-Rに乗りたいならここ数年がまさに「買い時」であり、現・オーナーで乗換・売却を視野に入れている場合は、もう少し粘ってから売るのも「アリ」だと考えています。

また、NISMOに関しては別物だと考えたほうが良いです。NISMOは値が非常に落ちにくく、これから上る可能性は十分考えれます。
ただし、初期投資が非常に高額なので資金に余裕がある方向け。

まとめ~高く売れたらラッキーぐらいに考える~

最後に念を押しておくと、筆者のような「元中古車のプロ」ならコネをフル活用し儲けることもできますが、一般ユーザーが車を投資目的で利益を得るのは至難の業、ネット情報を信じて安易に手を出すのはやめておきましょう。

そもそもGT-Rは、圧倒的なパフォーマンスを楽しみ、洗練されたデザインを愛でるのが醍醐味ですから、投資目的での購入などせず「タイミング良く高く売れてラッキー!」程度に留め、できれば長く付き合っていくべき「名車」だと考えています。