BNR32のよくある故障と修理費用は?ある程度の出費は仕方ない!

自主規制ギリギリの280PSをたたき出す、ツインターボRB26DETTエンジンを初搭載、16年ぶりの復活となる1989年に華々しくデビューしたBNR32型スカイラインGT-Rは、90年代中盤まで国内外のレースを総なめしました。

紛れもなく日産史上屈指の名機であり、中古車市場での人気も非常に高いBNR32も販売終了から25年経過、どこにガタが来ていても仕方ない「旧車」と呼べる域に達しているため、起こり得る故障を挙げていくと正直キリがありません。

しかし、BNR32ならではの「持病」を知り、適切にメンテナンスすることによって、修理コストを節約し長く乗り続けることも可能なのです。
今回も当サイトの元整備士専属ライターが当時の経験を元に詳しくお伝えします!

パワステオイルの漏れ

BNR32の持病としてもっとも有名で、とにかく多いトラブルがパワステオイルの漏れであり、リザーバータンクのIN・OUT側ホースの劣化による破損、及び硬化によるつなぎ目からの漏れが頻発します。

パワステオイルは、カー用品店などで1Lあたり1,000~1500円程度で販売されているため、漏れている量が少ない場合、継ぎ足しでしのいだりジョイント部のクランプを増し締めなど、応急処置するケースもありますが、キリがないので新品に交換したほうが◎。

ただ、ディーラーや知識や経験に乏しい修理工場に持ち込むと、漏れの原因となるゴムホース・クランプの単品交換ではなく、金属ホースを含めたASSY交換をされてしまうため、部品代と工賃で7万円近くかかってしまいます。

一方、スポーツカーを専門に取り扱っているショップや、熟練メカニックが所属している修理工場の場合、漏れの原因となっているゴムホースとクランプだけを交換してくれるところもあるため、大きく修理費用を節約することが可能です。

BNR32には大小6本のゴムホースが使用されており、交換時破損していなくても近い将来、他のゴムホースから漏れ出す可能性が高いため、工賃を考えると一気に新品へ交換した方がお得。

また、サムコ製の強化ホースキットが3万円程度で販売されているので購入し、行きつけのカーショップで持ち込み交換すれば、頻発するパワステオイル漏れに悩ませることが、ずいぶん少なくなります。

[samco] サムコ パワーステアリングホースキット スカイライン BNR32 RB26DETT GT-R

created by Rinker

さらにホース交換時、もれなく締め付けクランプも新品に換えますが、BNR32に採用されているネジ式タイプのクランプはホースを締め付ける面圧が不安定なため、オイル漏れの原因になることも多い。
これは、ディーラーでもよく実施されている改善策ですが、面圧が一定になりやすいR34以降のスプリング式クランプを転用することにより、クランプが原因のオイル漏れ発生を少なくできるので、持ち込んだ車業者に相談してみましょう。

なお、BNR32はパワステのリザーバタンクについている蓋の部分から、普通に走行していてもオイルが漏れる構造上の欠陥があり、激しくコーナーを攻めるような走行をした際にはパワステオイルが勢いよく噴き出し、周辺を汚してしまいます。

新品に交換しても「必ず」漏れる箇所なので、軍手やウェスをタンクに被せるぐらいしか対処法はありませんが、難燃性の素材で作られたタンクカバーも販売されているので、見た目が気になるという方は、ぜひ探してみてください。

ドレンボルトからのオイル漏れ


出典:みんカラ

これは構造上の持病というより、人為的ミスが原因の故障・トラブルと言えますが、BNR32はオイルパンが柔らかいアルミ製であるため、オイル交換時にドレンボルトを過度に締め付けるとネジ山が損傷し、そこからポタポタとオイルが漏れてしまうことがあります。

損傷がネジ部にとどまっている場合は、ねじ山を専用工具でワンサイズ大きく掘り直し、適合するドレンボルトに付け替えることも可能で、業者や使用オイルによってまちまちながら、工賃を含めても1万円あれば漏れを止めることができます。

一方、経年によって否応なく劣化しているBNR32のオイルパンは、適切な締め付けトルクを遵守しても、「パキン!」と嫌な音を立てて割れてしまうことがあります。

こうなると、オイルパン自体を交換するしかないと思われる方も多いでしょうが、些少なヒビ程度であればパテ補修も可能で、アルミ溶接での修復に対応しているところもあるため、あきらめずリーズナブルな価格で修理してくれる業者を探しましょう。

ドレンボルトの締め付け過ぎによるオイル漏れは、軽度であるケースがほとんどであるため、基本的にオイルパンを交換しなくとも修復できますが、修復後ポタポタとしずくが落ちるほど漏れる場合は車検に通過しないため、新品への交換もやむなし。

BNR32の純正オイルパンは現在販売されていないため、3万円程度で出回っている社外品を使用することになり、工賃とオイル代を含め5万円程度の費用が必要になります。

年数が経過し非常にもろくなっているBNR32のオイルパンは、プロでもドレンボルトの締め付けに慎重を期する代表格ですので、慣れないのに安易な考えでエンジンオイルをDIY交換するのは、やめておいた方が無難です。

フロント側アッパーアームのガタ

元々、高負荷がかかるパーツであるうえフロントが重いBNR32の場合、ハードな乗り方をしているとあっという間にガタが来てしまうフロント・アッパーアームも、この車特有の泣き所です。

通常の車であれば、7~8万km走行してもガタつかないこともありますが、BNR32の場合は1~2万kmあたりで寿命がやってくるため、「消耗品」と捉えて素直に部品交換するしかありません。

一般ユーザーの場合、車検や定期点検時の指摘で初めて気づくのがほとんどながら、

  • フロントタイヤの減りが異常に早い
  • 走行中前方からゴトゴト音がする

といった症状を感じた際は、アッパーアームのガタを疑う必要があります。

ゴム製のブッシュが破れているだけで、アーム自体は損傷していないケースもありますが、純正新品でも片側7~8,000円で入手できるため、ブッシュ打ち替え&脱着工賃を考えると、丸ごと交換した方が結果的にお得になります。

なお、CUSCOやKTSなどの部品メーカーから、2,5~3万円程度の価格帯で強化アッパーアームがリリースされていますが、こちらを使用したからといって何倍も長持ちするわけではないため、コスパ的に純正の方が優れていると考えています。

タペットからの異音が激しい

見出しでは「異音」と表現しましたが、タペットからのカタカタ音は新車でも多少は聞こえるものなので音が小さく気にならない程度なら、放置していてもそれほど問題ありません。

RB26DETTエンジンの先天性疾患と言えるタペットからの打音ですが、経年使用によって溜まったスラッジがラッシュアジャスターを傷つけ、動作不良を引き起こした場合は打音が激しくなってくるため、快適に乗りたいのであれば整備が必要になってきます。

ラッシュアジャスタは修理が効かないため交換必須、パーツ自体は3,000円程度とそれほど高価ではありませんが、バルブごと付いている部品なのでBNR32の場合、「3,000円×24個+工賃」が必要となります。

スラッジが原因であるため、マメなオイル交換をすることこそ最大の予防策で、洗浄剤が添加されている固めのオイルでフラッシングを施すと、症状が劇的に改善するケースもあるためぜひお試しを。

ドライブシャフトブーツがすぐに破れる

通常、ドライブシャフトブーツは経年に伴うゴムの劣化と、数限りなく繰り返されるハンドル操作によって破損に至る消耗品ですが、BNR32の場合は高速域でカーブを曲がった際、「ブチッ!」とねじ切れてしまうことがあります。

構造上、ハードなドライビングをしないケースでも、他車種よりかなり早く破れる傾向にあり、ベアリングを保護するグリスが抜けきって焼け付きを起こすと、高額になるASSY交換が必要になるため、マメに破れていないかチェック・発見したらすぐにブーツ交換を。

ちなみに、ブーツの蛇腹部分にタイラップ(結束バンド)を巻き付けると、案外長持ちした経験があるため、自己責任ながら試してみるのもアリです。

アイドリングが保てなくなった

アイドリングが保てずエンジンが停止してしまうのには、全車種共通の原因としてアイドリング回転数が低すぎることが考えられ、こちらは調整することによって改善します。

一方、BNR32特有の原因としては、インタークーラーのアウト側パイピング抜けがあり、抜けたとき発生する音は非常に大きいため、運転中であってもすぐに気が付くはずです。

もちろん、差し直せばすぐに症状は改善するものの、一度抜けると油分を含むブローバイがホースに付着するため、抜けやすくなります。

対策としては、差し直す前にパーツクリーナーをかけ、ウェスで油分をしっかり拭き取るぐらいしかなく、どんなに丁寧に除去してもよく再発するトラブルですから、「持病」と割り切り気長に付き合っていきましょう。

番外編

最後に、番外編と題して持病とまでは言えないものの、よく持ち込まれるその他のBNR32故障事例を列挙し、簡単ながらトラブルシューティングをお伝えしておきます。

  • スピードメーターの故障
    タコメーターの故障が目立つR33とことなり、古いBNR32はスピードメーターの針が、プルプルとわずかに振れるケースが多い。ワイヤーのグリス抜けが主な原因ながら、気にならないなら無視してOK。
  • デジタル時計の故障
    当然運転に一切支障ないため、修理する必要性は正直皆無。いっそのこと撤去し、ターボタイマーあたりを後付けした方が役に立つ。
  • クラッチ関連
    ハイパワー車種共通の宿命だがクラッチの減りが早く、半クラを多用するとすぐに滑り出してしまうため注意。また、レリーズシリンダーにも高負荷がかかるため故障しやすい。
  • デフオイル漏れ
    デフケースのオイルシール抜けが原因、滲み程度ならワコーズなどが販売しているシーリング剤を注入し、様子を見るのもアリ。
  • エアフロメーターの不具合
    故障時の症状としては、2,500回転を超えたあたりでリミッターがかかった時のような振動が出たり、その他アイドリングの不安定やエンストすることもあり、部品交換となれば軽く10万円を超えるコストがかかる。エアフロを清掃することで改善するケースもあるため、実践してみる価値あり。

まとめ

今年誕生から30周年を迎えた、BNR32型スカイラインGT-Rは最高傑作の呼び声も高く、米国においてクラシックカーとして認められ、検査なしで公道を走行できる「25年ルール」の対象となった2015年あたりから、中古車価格が高騰・入手困難になっています。

その結果、程度の良い中古出物はびっくりするような高額で取引されていますし、手を出しやすい価格帯の車体は走行距離が長めで、足回り関連を中心に「故障予備軍」が満載であるケースも多いため、ある程度の修理コストは覚悟のうえで購入する必要があります。

しかし、よくある故障の原因と症状を知り尽くし、修理コストの節約術や再発防止の対策をマスターすれば、程度が抜群ではないBNR32でも長く乗り続けることも可能なので、歴史に残る名車をゲットして、ハイスペックな走りを楽しんでみてはいかがでしょうか。